夫のがんが進行しているという話を受けて、わたしたちは一気に緊急モードに戻った。化学療法を中断して10ヵ月、10回の血液検査と3回のCT、胃カメラ検査を受けてきたけれど、進行しているといわれたのははじめてのことだった。安心しきっていた夫はとくに強いショックを受けた。

 

当日は病院の帰りにあてもなく車で遠出し、知らない山の中をぐるぐる走り続けた。数日落ち込み、さらに数日低空飛行で暮らした。そうした日々の最中にブログを書けたらいいんだべな、と思うけれど、結果的に書けなかった。わたしは仕事をしている時間以外は気を紛らわし続けていた。

 

わたしがはじめに感じたのは恐怖で、次に怒りが込み上げてきた。あれだけいったのにどうしてがんに餌をやるような暮らしを続けたのか。文字通り命がけで調べあげたあれこれをどうして無視するのか。ここ数か月の夫はどこまで無茶ができるか試しているようですらあった。

 

いうまでもなく夫はここ数か月の自分の暮らしを誰よりも後悔していた。夫は後は野となれ山となれで自棄になっていたのではなく、完治したのかもしれないと半ば本気で考えていたからだ。

 

夫が想定するがんの進行はまず腫瘍マーカーにあらわれ、次に胃カメラかCTで変化が確認できるというものだった。しかし今回の診断はいきなり胃カメラで目視できる変化からのものだった。

 

赤く腫れた胃壁の一部が盛り上がり、中心が火口のように凹んでいる。そこががんだろうと医師はいう。詳しいことはもう一度腹腔鏡検査をしてみないとわからないが、可能なら胃切除手術を受けてみてはどうか。

 

去年の春に胃切除手術が受けられると聞いたらわたしたちは喜んだかもしれない。もはや手の施しようがないからと、「治る見込みのない場合にのみ投薬を許可される」というオキサリプラチンによる化学療法を受けることにしたあの日から一年が過ぎていた。

 


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